自殺カタログ
けれど、今までロクに会話もしてこなかった男子生徒に近くにいられても、あたしは困ってしまう。


晃紀はアンミたちの仲間だし、安心することはできなかった。


「お前さ、なんで反抗しないんだよ」


「へ?」


あたしは目を見開いて晃紀を見た。


「あんなやられっぱなしでいいのかよ」


「……いいわけないじゃん」


「だよな。人数で勝てないからか?」


その言葉にあたしは少し迷った。


確かに相手はいつでも複数であたしを傷つけてくる。


だけどきっと、人数が多いから反抗できないとかそんな単純な事じゃないんだ。


「あたし、2年にあがってすぐ、アンミを階段から突き落としたの」


「は……?」


「驚いた? でも故意的に落としたわけじゃない。あたしは授業で使う大きな段ボールを運んでいたの。


視界が狭くて、アンミが立っている事に気が付かなかった。


アンミは階段の踊り場で月乃と百花の2人と立ち話をしてたの。その時、あたしの荷物がアンミの体にあたって……アンミは階段から落ちた」


当時の事を思い出すとキュッと胸が苦しくなる。


段ボールの狭い視界の隙間から、アンミが落ちていく姿を見た。
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