自殺カタログ
「誰でもいい。簡単にサインしてもらえそうな人を探そう」


そう言うと、理央は立ち上がって部屋を出た。


あたしは慌てて理央の後を追いかけて部屋を出る。


その手にはしっかりと『自殺カタログ』が握られている。


お母さんに声をかけて玄関を出ると、空はオレンジ色に染まりはじめていた。


「そこの公園に行こう」


理央がそう言い、歩き出す。


近くには大きな公園があり、そこでは毎年納涼祭が行われていた。


いつも学校帰りの小学生たちでにぎわう場所だ。


公園へ向かうと、数人の子供がブランコに乗って遊んでいた。


もう日が暮れ始めているから、人数は少ない。


あたしたちが公園に入って来たのを見つけて「こんにちは」と、元気に挨拶をしてきた。


その笑顔にこちらも笑顔になってしまう。


どの子も近所の子供たちで、顔見知りだ。


あたしたちは土管の上に座りカタログを開いた。


「どの子にする?」


理央が聞いてくる。


あたしは目を見開いて理央を見た。


子供たちの誰かにサインをさせようとしているのがわかった。


「冗談でしょ?」
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