自殺カタログ
「冗談なワケないじゃん」


理央はそう言いながらハガキを一枚剥がした。


「でも、あの子たちはまだ子供だし……」


「だからやりやすいんでしょ?」


そう言いながらハガキに自殺方法の番号を記入する。


それは『車に轢かれる』というものだった。


これなら事故として処理されそうだ。


轢かれたのが子供なら道路に飛び出したのだと世間は勝手に勘違いしてくれるだろう。


だけど……。


あたしは無邪気に遊んでいる子供たちに視線を向けた。


笑い声はいつの間にか止んでいて、みんな帰る準備をしている。


「やめようよ、みんな帰るみたいだし」


「そうでもないみたいだよ?」


理央が手洗い場を指さしてそう言った。


みんなが公園から出て行く中、1人の少年が手を洗っているのが見えた。


砂場で遊んだのか、手も足も顔も泥だらけ。


それらを洗い流すにはもう少し時間がかかりそうだ。


「チャンスだよ」


理央が小声でそう言った。


あたしはゴクリと唾を飲み込んで理央を見た。
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