自殺カタログ
理央は真剣な表情をしている。


本気だ。


見ていてすぐにわかった。


「あたしが行く」


ジッと固まったまま動けずにいるあたしを見て、理央がそう言った。


土管からピョンッと飛び降りて少年の隣に立った。


あたしは慌てて理央の後を追いかける。


「ねぇねぇ君、執筆診断って知ってる?」


突然声を抱えられた少年は水から顔を上げて理央を見上げる。


顔の土を洗っていたところで、前髪から水滴がしたたり落ちている。


少年は整った顔立ちをしていて、健康的に日焼けをしていた。


外でよく遊んでいる証拠だ。


「しっぴつ診断?」


少年は声変わりもしていない声でそう言い、首を傾げた。


「そう。文字を書くことでその人の性格がわかるんだよ」


理央の言葉に少年の目が輝いた。


興味を示したように水を止めて服の袖で顔をふく。


「なにそれ、面白そう」


「お姉ちゃんが診断してあげるから、ここにお名前書いてみてくれる?」
< 82 / 311 >

この作品をシェア

pagetop