自殺カタログ
「こ、晃紀は大丈夫だった?」


「俺は全然大丈夫だ。でもお前は……」


そこまで言い、言葉を切る晃紀。


その表情はあたしを憐れんでいるように見えた。


なに?


晃紀はなにか知っているのだろうか?


「な、なに?」


恐る恐るそう訊ねた。


「なんでもない。何かあったら、相談に乗るから」


晃紀はそう言い残して教室へと戻って行ったのだった。


その後ろ姿を緊張した面持ちで見つめるあたし。


「晃紀って、それを伝えるためだけにここまで来たのかな?」


理央がそう言う。


「さぁ……わからないけど……」


「カタログについて知っている様子はなかったけれど、晃紀の動きには気を付けた方がいいかもしれないね」


「う、うん。わかった」


理央の言葉にあたしは素直に頷いたのだった。
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