ゆく年くる年きみのとなりで
君と新しい日々へ
大晦日の晩は、かに鍋に限る。
脇を飾るのは、しいたけ、えのき、春菊、お豆腐。
葱と白菜とくずきりは少し時間が経ってとろんとしてきた頃が好き。でも油断してると鷹嗣(たかつぐ)に全部食べられるから、しっかり見張っておかないといけない。
それから、主役のかに。
半むき身はだしも良く出ておいしい。
今年最後のプチ贅沢。
そして、その残り汁を使って締めの年越し蕎麦を作るのが、私のお気に入りだ。
「私の分まで送ってくださる富士人さんほんと神……」
「今年はなんか気合い入ってたもんなー。年明けはまたまなみちゃん連れて帰って来いってうるせえし」
鍋の残り汁をこしたものに醤油とみりんを加えて。
私が隣で見守る中、味見しながらせっせと蕎麦つゆをこしらえる恋人の鷹嗣は、何を隠そう実家がお蕎麦屋さんである。
富士人(ふじひと)さんは鷹嗣のお兄さんで、家業を継ぐべく実家で修行中の彼は毎年年末になると手打ち蕎麦を送ってきてくれるらしい。
去年までは鷹嗣の分だけだったけれど、今年はなんと私の分まで!
今年の初め、鷹嗣の帰省にくっついて行ったときに初めてお目にかかった富士人さんが「お前彼女いるならもっと早く言えよ! 二人分送ってやるから!」と息巻いていたのを思い出す。
忘れないでいてくれたんだなあ。
嬉しいなあ。
あの日あたたかくもてなしてくれたときから、私は蕎麦処「な寿日」の大ファンだ。
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