ゆく年くる年きみのとなりで
「おいしかったあ」
つゆまで全部お蕎麦をたいらげ、私は箸を置く。
ごちそうさまでした、と手を合わせると、向かい合ってテーブルにつく鷹嗣が美味かったな、と笑った。
「ほんと幸せ……新谷兄弟最強だわ……」
「腕上げたなって兄貴に言っとこ」
「あ、あと来年もぜひよろしくお願いしますとお伝えください!」
「はは、りょーかい」
軽く頷き立ち上がると、彼は空になった器をキッチンの流しへと持っていく。私もついて行き、ついでに食器洗いを申し出た。
おいしいお蕎麦作ってもらったから、これくらいはしないと。
……というのもあるけれど、なんだか気持ちがそわそわしてしまうから何でもいいから手を動かしておきたいのだ。
(……りょーかい、だってさ)
来年も富士人さんに手打ち蕎麦を二人分お願いするというのは、一年後も鷹嗣と私の交際が順調に続いてるってことが前提、なんだけども。
ナチュラルに発破をかけてみたつもりなんだけど、伝わったかな。
ちゃんとそこのとこ了解してくれてるのかな、この人は。
はっきり聞いてみるべきなのかな。
来年も再来年も、私と年を越す気はありますか、って。