いつか時が戻るまで。
僕は、母と2人で診断室へ入った。

すると医者が、僕の現在の状態について語った。
「今の神田さんの病態ですが…。
はっきり言いますと、あまりいい状態じゃありません。」
予感的中だ。
「あの……どういった?」
「ああ。
神田さん、以前から時々、記憶がなくなったり、言葉を忘れたり、などの経験があったと言いましたね?」
「え、ああ、はい。」
「それが、病気に繋がったサインです。」
どういうことだ?
前から、病気だったのか?
普段あまり気にしていなかったことだったが、よくなかったことだったんだ。

「僕は、なんの病気なんですか」
思い切って聞いた。覚悟はできた。
もう、生きられないんだろう。
やることもなかったし、いいか。

「神田さんの今の病気は、若年性認知症と判断しました。」
「?それは……なんですか?」
「厳密に言うと、64歳未満の人がかかる、認知症です。若い男性に多く、物忘れや、名前忘れ、記憶喪失などが思いやられます。」
「忘れる……」
思い出した。最近、やたらとものを忘れたり……この間も自分の名前を一瞬忘れていた。

「僕…………死にますか?」
「今はまだわかりません。
もう少し詳しい診断がでたらまたお伝えします」
「はい……」
< 12 / 13 >

この作品をシェア

pagetop