雪の日
その光景を見たときは、こっちの心臓が止まる思いだった。


幸い、発見したときは手首を切ってからあまり時間がたっていなくて、命に別状はなかった。


青白い顔で横たわる彼を見ながら、あたしは祈った。


お願い、雛子。


彼を連れて行かないで。


雛子に続いて、彼も失ったら、あたしはどうしたらいいの。


完全にあたしのエゴだけれど、そう祈らずにはいられない。




手首を切った翌日。


病院のベッドで目を覚ました彼の頬を、あたしは気がついたら叩いていた。

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