雪の日
あたしが病院に駆けつけたときには、雛子の心臓はもう、止まっていた。


顔に白い布が掛けられていて、なんだかテレビの中の出来事みたいに感じた。


動かない雛子の手を握って泣いてるお母さんと、お父さん。


その後ろの壁際に、彼が立っていた。


呆然とした表情で、まだ信じられない、という顔で。


泣くこともできずに、ただ立っていた。


お通夜の時も、お葬式の時も、彼は涙を見せなかった。


彼ひとり、現実世界から切り離されているようで。


見ているのがつらかった。

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