秘密の告白~おにいちゃん、あのね~
*Episode 2* 僕の道
あおぞら園でのバイトは、それなりに楽しく働いた。
ケンカに巻き込まれたり、橋渡しをしたりすることもあったし、折った折り紙をプレゼントでもらうこともあった。
そして……
「おにいちゃん」
一番の驚きは、うさぎのぬいぐるみを抱きしめた遥姫が、僕に懐いてくれたこと。
か細い声で、少し照れたように僕を呼ぶ。
「はるきぃーっ!なんでたくちゃんなんだよ!おれのところに来いよっ」
キイキイと苛立たしく声を荒げるトラの恋のお相手は、遥姫だった。
肝心の遥姫自身はトラには特に意識はしていないようだったけれど、遥姫自身が反応するのはどうやらトラが一番のようだ。
この辺りは一緒に過ごすうちになんとなく察したことだ。
園長先生に呼ばれて子供たちの輪を抜けても、遥姫は背後をちょこちょこくっついてくる。
他の子に声をかけられて遊びだしても、一緒に参加はしないのに僕の後ろをくっついてくるのをやめない。
まるで親鳥と雛鳥だ。
「遥姫ちゃんはずいぶんたくちゃんのことがお気に入りなのね」
ささいな言葉だけれども、僕はとても光栄な気がしていた。
僕がいたことに意味があったのか、それはきっとこの子たちが大人になったときにわかることなのかもしれない。
ただ、彼女のここでの思い出に何か一つでも笑えたことが残るなら、それは本望だ。
だからこそ、僕は初めてここまで悩んだと思う。
「園長先生、ご相談があります」
子供たちが庭で遊んでいる時間を見計らって、テーブル越しに園長先生と改まって話をしていた。
僕の、将来の話を。
「ここで働かせてもらって二年経ちました。子供たちからこんな風に懐かれるなんて、正直思っていませんでした。
だけど、いつまでもここにいてはいけないと思っています」
園長先生は、優しいまなざしでずっと聞き入ってくれている。
「僕は……ここを辞めようと思っています」
子供たちが巣立つように、高校卒業という名の僕の巣立ちの時もすぐ迫っていた。
「これは、単なるたくちゃんを知るただのおばさんとして聞きたいことなのだけど、たくちゃんは、高校をでたらどうするの?」
「はい、僕は昔から変わりません。就職するつもりです。
中学卒業時、担任に言われました。中卒じゃ仕事に就くのも一苦労すると。
ここで働かせてもらって、先生や母がいう気持ちがよくわかりました。子供たちだけじゃなくて、お迎えに来る親御さんや先生たち、地域の人……僕は何もわかっていませんでした」
ぐっとこぶしに力を入れて、ふうと息を一つ吐き出した。
ケンカに巻き込まれたり、橋渡しをしたりすることもあったし、折った折り紙をプレゼントでもらうこともあった。
そして……
「おにいちゃん」
一番の驚きは、うさぎのぬいぐるみを抱きしめた遥姫が、僕に懐いてくれたこと。
か細い声で、少し照れたように僕を呼ぶ。
「はるきぃーっ!なんでたくちゃんなんだよ!おれのところに来いよっ」
キイキイと苛立たしく声を荒げるトラの恋のお相手は、遥姫だった。
肝心の遥姫自身はトラには特に意識はしていないようだったけれど、遥姫自身が反応するのはどうやらトラが一番のようだ。
この辺りは一緒に過ごすうちになんとなく察したことだ。
園長先生に呼ばれて子供たちの輪を抜けても、遥姫は背後をちょこちょこくっついてくる。
他の子に声をかけられて遊びだしても、一緒に参加はしないのに僕の後ろをくっついてくるのをやめない。
まるで親鳥と雛鳥だ。
「遥姫ちゃんはずいぶんたくちゃんのことがお気に入りなのね」
ささいな言葉だけれども、僕はとても光栄な気がしていた。
僕がいたことに意味があったのか、それはきっとこの子たちが大人になったときにわかることなのかもしれない。
ただ、彼女のここでの思い出に何か一つでも笑えたことが残るなら、それは本望だ。
だからこそ、僕は初めてここまで悩んだと思う。
「園長先生、ご相談があります」
子供たちが庭で遊んでいる時間を見計らって、テーブル越しに園長先生と改まって話をしていた。
僕の、将来の話を。
「ここで働かせてもらって二年経ちました。子供たちからこんな風に懐かれるなんて、正直思っていませんでした。
だけど、いつまでもここにいてはいけないと思っています」
園長先生は、優しいまなざしでずっと聞き入ってくれている。
「僕は……ここを辞めようと思っています」
子供たちが巣立つように、高校卒業という名の僕の巣立ちの時もすぐ迫っていた。
「これは、単なるたくちゃんを知るただのおばさんとして聞きたいことなのだけど、たくちゃんは、高校をでたらどうするの?」
「はい、僕は昔から変わりません。就職するつもりです。
中学卒業時、担任に言われました。中卒じゃ仕事に就くのも一苦労すると。
ここで働かせてもらって、先生や母がいう気持ちがよくわかりました。子供たちだけじゃなくて、お迎えに来る親御さんや先生たち、地域の人……僕は何もわかっていませんでした」
ぐっとこぶしに力を入れて、ふうと息を一つ吐き出した。