秘密の告白~おにいちゃん、あのね~
*Episode 3* 想いの名
「おにいちゃん、ここは?」
「ああ、そこはね……」
あんなにもじもじとしていたのに、あの頃よりも断然言葉数も増えているし、何よりも表情が出るようになっていた。
週に2~3日、僕の都合を優先していいというこれまた恵まれた環境で始まった家庭教師。
あの顔合わせのあと、混乱する中、男性……一之瀬義之さんは遥姫を隣に座らせてゆっくり説明してくれた。
きっかけは、たまたま母と他の清掃員の人とで僕が大学に入ることを立ち話してしまっていることが耳に入り、たまたま僕が娘さんが通うあおぞら園の卒園時だったから、そしてたまたま僕が少し前にバイトをしていた、ということ。
要望として、勉強というよりも、どうにも人見知りを拗らせた一人娘に手を焼いており、すこしでも学校生活を楽しんでほしくて人付き合いに慣れさせたい、ということだった。
まったくの初対面の人だと遥姫も意味がないので、もしかしたらバイト時代に少しでも顔が知れているかもしれない、という僅かな可能性にかけて、この家庭教師の話が持ち上がったそうだ。
確かにあの頃の僕の園でのバイト生活の中で、遥姫は存在感があった。
寂しそうに一人ぽつんとしていた小さな女の子が、何を気に入ったのか雛鳥のごとく僕の後について回り、別れの時は大号泣だ。
園のことや遥姫のことは思い出すことはあっても、なかなか足は向かなかったこの一年。
まさかこんな再会があるとは露ほども思っておらず、驚くと同時に、はじける笑顔が目の前にあることがとても僕も嬉しくなった。
「久しぶりだね、遥姫」
あの再会の直後、笑いかけると唇をかみしめ、コクリと頷き少し頬を赤らめた遥姫。
あのころは困ったように頷くだけだっただろうに……と、僕も親鳥のように頬がほころんでしまうのは仕方ないだろう。
「改めて、娘の面倒をみてもらえないだろうか?」
義之さんの言葉に、母に目をやると母も緊張と期待でいっぱいのようで、僕は向き直ってぺこりと頭を下げた。
「僕なんかでよければ、よろしくお願いします」
こうして、不思議な縁を手繰り寄せるかのように、僕の生活に少しずつ遥姫の色が足されていくこととなった。
「ああ、そこはね……」
あんなにもじもじとしていたのに、あの頃よりも断然言葉数も増えているし、何よりも表情が出るようになっていた。
週に2~3日、僕の都合を優先していいというこれまた恵まれた環境で始まった家庭教師。
あの顔合わせのあと、混乱する中、男性……一之瀬義之さんは遥姫を隣に座らせてゆっくり説明してくれた。
きっかけは、たまたま母と他の清掃員の人とで僕が大学に入ることを立ち話してしまっていることが耳に入り、たまたま僕が娘さんが通うあおぞら園の卒園時だったから、そしてたまたま僕が少し前にバイトをしていた、ということ。
要望として、勉強というよりも、どうにも人見知りを拗らせた一人娘に手を焼いており、すこしでも学校生活を楽しんでほしくて人付き合いに慣れさせたい、ということだった。
まったくの初対面の人だと遥姫も意味がないので、もしかしたらバイト時代に少しでも顔が知れているかもしれない、という僅かな可能性にかけて、この家庭教師の話が持ち上がったそうだ。
確かにあの頃の僕の園でのバイト生活の中で、遥姫は存在感があった。
寂しそうに一人ぽつんとしていた小さな女の子が、何を気に入ったのか雛鳥のごとく僕の後について回り、別れの時は大号泣だ。
園のことや遥姫のことは思い出すことはあっても、なかなか足は向かなかったこの一年。
まさかこんな再会があるとは露ほども思っておらず、驚くと同時に、はじける笑顔が目の前にあることがとても僕も嬉しくなった。
「久しぶりだね、遥姫」
あの再会の直後、笑いかけると唇をかみしめ、コクリと頷き少し頬を赤らめた遥姫。
あのころは困ったように頷くだけだっただろうに……と、僕も親鳥のように頬がほころんでしまうのは仕方ないだろう。
「改めて、娘の面倒をみてもらえないだろうか?」
義之さんの言葉に、母に目をやると母も緊張と期待でいっぱいのようで、僕は向き直ってぺこりと頭を下げた。
「僕なんかでよければ、よろしくお願いします」
こうして、不思議な縁を手繰り寄せるかのように、僕の生活に少しずつ遥姫の色が足されていくこととなった。