秘密の告白~おにいちゃん、あのね~
『ねえ、はるちゃん知らないわよね?』
久しぶりに懐かしい名前を聞いた。
胸の奥に沈み込んでいた彼女の名前を、こうして実際耳にするのはとても久しぶりだったから。
「知らないけど。なにかあったの?」
理由を付けて、僕自ら離れてしまった彼女のことを僕が知るわけがない。なのに、いまさら何の用があるっていうんだ?
『そう、別に知らないならいいんだけどね』
困ったように思わせぶりな口調に、僕はすこしイラついてしまった。就活が上手くいかないこともあったのだと思う。
「だからどうしたっていうんだよ!」
僕の言葉に驚いたのか、電話越しの母も動揺を隠せず震えるように零した。
『いなくなっちゃったみたいなの、はるちゃん』
頭の中のどこかの線がプチンとはち切れた気がした。
気が付いたら家を飛び出していた。
季節は進み、暖かい日が続き初夏も間もなくという時期だったけれど、こんなに日が沈んでいれば容赦なく風は体を冷やす。
向かっていたのは、彼女の家だった。
屋敷の前にはすでに大人が数名と立往生をしていて、その中に義之さんもいた。
「あ、あの!母から聞いて……!」
僕の声に義之さんが気づき、憔悴しきった表情で駆け寄ってきた。
「すまないね、匠くん」
息を整えながら僕は詳細を確認した。
学校にはきちんと行ったらしい。帰宅はしてあり、荷物も部屋にあった。しかし、夕方になっても部屋からでてくる様子がなく、お手伝いの人が部屋をのぞきに行ったところもぬけの殻だったそうだ。
どこかに出かけたのだろうか、と考えたが、今まできちんと一言残して出ていく彼女だったので、不安になり義之さんに相談したことがきっかけだったとのこと。
「こんなことは初めてなんです……」
年配の女性が不安そうに肩を落とす。
「防犯カメラもチェックしたんだけどね、やっぱり外に出ているようなんだよ」
門扉についている小さなカメラがキラリと光る。
小学生がこんな時間までほっつき歩けるとは思えない。きっと、隠れながらどこかへ……
「あ、あおぞら園は……!」
久しぶりに懐かしい名前を聞いた。
胸の奥に沈み込んでいた彼女の名前を、こうして実際耳にするのはとても久しぶりだったから。
「知らないけど。なにかあったの?」
理由を付けて、僕自ら離れてしまった彼女のことを僕が知るわけがない。なのに、いまさら何の用があるっていうんだ?
『そう、別に知らないならいいんだけどね』
困ったように思わせぶりな口調に、僕はすこしイラついてしまった。就活が上手くいかないこともあったのだと思う。
「だからどうしたっていうんだよ!」
僕の言葉に驚いたのか、電話越しの母も動揺を隠せず震えるように零した。
『いなくなっちゃったみたいなの、はるちゃん』
頭の中のどこかの線がプチンとはち切れた気がした。
気が付いたら家を飛び出していた。
季節は進み、暖かい日が続き初夏も間もなくという時期だったけれど、こんなに日が沈んでいれば容赦なく風は体を冷やす。
向かっていたのは、彼女の家だった。
屋敷の前にはすでに大人が数名と立往生をしていて、その中に義之さんもいた。
「あ、あの!母から聞いて……!」
僕の声に義之さんが気づき、憔悴しきった表情で駆け寄ってきた。
「すまないね、匠くん」
息を整えながら僕は詳細を確認した。
学校にはきちんと行ったらしい。帰宅はしてあり、荷物も部屋にあった。しかし、夕方になっても部屋からでてくる様子がなく、お手伝いの人が部屋をのぞきに行ったところもぬけの殻だったそうだ。
どこかに出かけたのだろうか、と考えたが、今まできちんと一言残して出ていく彼女だったので、不安になり義之さんに相談したことがきっかけだったとのこと。
「こんなことは初めてなんです……」
年配の女性が不安そうに肩を落とす。
「防犯カメラもチェックしたんだけどね、やっぱり外に出ているようなんだよ」
門扉についている小さなカメラがキラリと光る。
小学生がこんな時間までほっつき歩けるとは思えない。きっと、隠れながらどこかへ……
「あ、あおぞら園は……!」