ふたりぼっち
ハルの瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。


「アキ。これからも、私と一緒に……居て下さい。側にいて下さい。一緒に思い出を……作って下さい。貴方と一緒なら、もう……何も怖くないです。例え、何度記憶を失おうと自分の名前すら忘れようとも。貴方と共に歩んで行けるのなら、私……どんな明日も乗り越えていける。そんな気が、するんです」


ハルが教えてくれた。


”過去”ばかり見ていると、大切な”今”を失うこと。


そして、その”今”が積み重なっていく”明日”さえも、失ってしまいそうになることも。

俺は深く頷く。

「当たり前だ。何度忘れられたって、何度でも思い出を作ってやる。何度でも、俺のことを好きにさせてやる」

彼女の身体を抱き締めた。




「どんな困難も乗り越えていこう。2人、一緒に」

抱き締めたハルの瞳からこぼれ落ちる瞳が、俺の服にしみ込んでゆく。


何粒も、何粒も。

「アキ、愛しています」

太陽のような笑顔で笑うハル。

「俺も愛しているよ、ハル」


その全てが、愛おしく思う。



< 101 / 118 >

この作品をシェア

pagetop