ふたりぼっち
***


こんな日が来るなんて、正直思ってもみなかった。

ハルにもう一度、結婚指輪を渡せる日が、来るなんて……。

彼女は涙を流しながら、指輪を見つめている。


「アキ、貴方って……本当に、優しいのね……」

流れ落ちる涙を拭きもせず、迷うこと無くハルは指輪を薬指にはめた。

「こんな欠陥だらけの私を、また妻として……迎え入れて、くれますか? 」


……誰からでも好かれる人間になんてなりたくもないし、なれそうにもない。

ただ君からだけは、好かれていたい。


バサバサとはためく白いカーテンが、まるでウエディングドレスの様に彼女の背中で揺れている。

俺は力強く頷いた。


「あぁ。共に、未来へ歩もう」

2年の月日を越え、記憶を失ってしまう壁を乗り越えて、再び愛によって結ばれた2人。


外から差し込む太陽の光を浴びながら、2人は……幸せそうに、抱き締めあっていた。
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