ふたりぼっち
私は考えることを放棄し、その場にうずくまる。「もう、いや……。私を家に返してよ……っ……。お父さん、お母さん……、助けて……」男が背中にそっと触れてきた。気持ちが悪くて、反射的にその手をパチンッとはたき落とす。「いやっ、触らないで! 」はたき落としたその時、男を見て一瞬、戸惑った。それ程強い力で叩いた訳ではないけれど……男は、悲痛そうな表情で私を見つめていたのだ。「な、なによ……」「いや、別に。着替えたくないなら、それで良い。じゃぁ俺はもう行くよ」男は身を翻し、椅子にかけてあったスーツを羽織る。「え、行くって……一体どこに……? 」