ふたりぼっち
男が出て行くのと同時に、白衣を来た恰幅の良い人物が病室内に入って来た。



「やぁ、ハルさん。具合はどうだい? 」

その男性の大きな体に、大きなお腹。


ニコッと笑う様は、まるで熊のようだ。

胸には、木村と書いた名札が。

どうやらこの病院の、先生のようだ。



「あ、申し遅れました。私はこの小さな病院のドクター、木村と申します」

ニコニコとしながら、私に手を差し出し握手を求める。


「あ、どうも」

ぎこちなく手を差し出すと、これまた熊のような色黒で大きな手がガッチリと私の手を取り、握手を交わした。

握手の後、木村先生は私のベッド横にパイプ椅子を出して、そこに座る。

「で、ハルさん。調子はどうですか? 頭痛とか吐き気とか今もありますか? 」

「あ、いえ。今の所、大丈夫です」

「そうですか、それは良かった。ハルさんの体調は大分良くなってきているので、今日中には退院できそうですよ」


私は先生に尋ねる。

「あの、先生は何かご存知なんですか? 私のことや、彼の……アキと名乗った、男のこと……」


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