ふたりぼっち
声が小さくて詳しい言葉を聞き取れなかったが、木村先生は私を見てゆっくりと頷いた。


「ハルさん、彼のことを信用してあげて下さい。大丈夫。アキくんはハルさんの為に、一生懸命頑張っています。今は分からなくとも、いずれはこの言葉の意味が分かりますよ」

「……じゃぁ私は、あの家に再び戻らなければいけない、っと言うことでしょうか……? 」



私は遠回しに、家に帰らせて欲しいと言う思いを込めたが、しかし。

「そうですね、そう言うことになる」


アッサリと返されてしまったその返答を聞き、ガックリと肩を落とす。



私はまた、あの家に戻らなければならないのか……。

あの何も教えてくれない、アキと言う男と一緒に暮らす時間を……また……。

そう落ち込んでいると、先生は「むしろ、」と言葉を続けた。


「むしろ、ハルさん。あなたはあの家に戻らなければならない。自分でも気付いていますよね? 自分の身体の変化に。あなたのその身体を、心を癒すきっかけが、あの家に……。アキくんに、あるのだからね」

「それはつまり、どういうことですか?」


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