ふたりぼっち

「ごめんなさい……」


「え？ なんで謝るんだ？ 」


「だって、私のせいで……仕事が……。貴方の会社にも、迷惑をかけてしまったから……」

俯きながらそう謝罪すると、男はグシャグシャと私の頭を撫でた。

「気にすんな、そんなこと。逆に俺は、１時間早く仕事上がれてラッキーくらいにしか思ってないよ。それに元はと言えば、俺の責任なんだから」

赤信号で、車が一時止まる。

運転席を見ると、男は優しい笑みを浮かべていた。

「だからそんな顔しないでくれ。ハルは、何も悪くない」


目尻が下がり、口角が上がっている、全てを受け止めてくれるような優しい微笑み。

この男.....アキは、もっと無愛想な人物だと思っていた。


無愛想で冷酷で、不気味。

今朝はそんなイメージを彼に抱いていたが、それは少し私の間違いだったようだ。

「明彦、さん……。貴方って本当は、優しい人なんですね」

マジマジと顔を見つめながらふと思ったことを口にしたすれば、彼がブハッと吹き出す。




「アハハハッ、何だよそれ。 朝はあんなに怖がってたのに。俺はハルが思ってる程、優しい奴じゃないよ。ってか、今……明彦さん、って……」