ふたりぼっち
しかし、俺は知っている。
明日には彼女の記憶は、無くなってしまうことを……。
守られることのない、口約束。
そんなものにさえ、縋りたくなるなんて。
「……俺も相当、限界がきてるみたいだな……」
大きくため息を吐きながら、頭を抱えた。
いっそ心中してしまおうか。
家に火でもつけてやろうか。
そんなことを考えた時期もあった。
でも、そんなことして何になる?
それらは全て、ハルから目を背けるということだ。
彼女に対する、裏切り行為といっても過言ではない。
俺は立ち上がり、リビングの奥の和室に置いてある仏壇に向かった。
仏壇には、ハルの父親と母親の名前が刻まれている。
俺は今まで壊れそうな彼女を守り通して来た両手を、重ね合わせた。
「どうか、俺に……もう少し、ほんの少しで良い。希望を、下さい……。じゃないと俺は、ハルを……裏切ってしまいそうです……」