ふたりぼっち
***


「……あ……き、明、彦……さ、ん……? 」


ハルが、俺の名を口にした。

「……俺の名前を、覚えているのか? 」

深夜で薄暗い部屋の中、目を点にしながら彼女を見つめる。

「は、い……。確か、明彦さん……ですよね? 」


こんなこと、事故以来初めてのことだ。

「ハル、他には?! 他に、何か覚えていることはないか? 」


両肩を掴むと彼女はビクリと身体を震わせ、困惑した表情を浮かべる。

どうやら覚えているのは、俺の名前だけの様だ。


どうして、今頃になって……?


昨日、部屋でショックを受けて倒れていたことと関係しているのか?


(……でも、)
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