ふたりぼっち
車で街に戻ると、明彦さんはパスタ屋さんに連れて行ってくれた。


「ここのパスタとピザ、1回食べてみたかったんだよなー」

メニューを開くと、色鮮やかなパスタやピザの写真が目に飛び込んで来る。

期間限定パスタなんてメニューもあるようだ。

「美味しそうですね。んー、どれにしよう……」

彼はメニューの表紙を指差す。

「これにするか? 好きなピザ1枚とパスタ2種類が選べる、デュエットってやつ」


メニューの説明書きには、【恋人やお友達と仲良く分け合えます。恋人同士のお客様なら、更に100円引き!】と記載されてある。


この場合、えーっと……

「私達は、恋人同士……ですか? 」


ふと疑問に思ったことが口に出てしまった。

彼は嫌な顔1つせず、そのまま呼び出しボタンを押す。

定員がペンと紙を持ってオーダーを尋ねにやって来た。


「このデュエットの恋人セットで。ピザは3番で、パスタは1番と……ハルは何番にする? 」


「え、あ、2番で……」

店員が復唱する。


「かしこまりました。恋人のデュエットでピザ3番、マルゲリータピザとパスタが1番のまぐろと紫蘇のワサビソースパスタ、2番のナスとひき肉のミートソースパスタですね。少々お待ち下さいませ」

一礼し、店員は 厨房にオーダーを通しに行った。

明彦さんは、ニコリと笑う。

「恋人同士に、見えるみたいだよ。」

あ、そう言えば注文する時に、恋人セットって言ってたな……。

でも、この人となら全然嫌な感じがしない。むしろ、しっくりくる感じ。


「ふふっ……そうみたいですね」
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