ふたりぼっち


「どんな? 一体、どんな気持ちになったんだ? 」

ふふっ、とハルは柔らかな笑みを浮かべる。


「あたたかい……気持ち……。……ドキドキして……まる……で、初恋みたいな……で……も、懐か……しい……気持……ち……」

言葉が途切れてしまう時間が長くなってきた。

俺は彼女の身体を強く抱き締めながら、声を詰まらせ必死に願う。


「ハル! どうか、お願いだ……。明日も俺の名前を、覚えていてくれ……っ……」

腕の力を抜いてハルを見ると、すやすやと 寝息を立て既に眠りに落ちていた。


掴みかけていた希望が、糸も簡単に滑り落ちて行く。

テレビから流れる笑い声が、やけに虚しく感じる。


リビングには只、眠るハルと動けない俺……そして秋の冷んやりとした空気が、それら全てを包んでいた……。
< 82 / 118 >

この作品をシェア

pagetop