ふたりぼっち
「どんな? 一体、どんな気持ちになったんだ? 」
ふふっ、とハルは柔らかな笑みを浮かべる。
「あたたかい……気持ち……。……ドキドキして……まる……で、初恋みたいな……で……も、懐か……しい……気持……ち……」
言葉が途切れてしまう時間が長くなってきた。
俺は彼女の身体を強く抱き締めながら、声を詰まらせ必死に願う。
「ハル! どうか、お願いだ……。明日も俺の名前を、覚えていてくれ……っ……」
腕の力を抜いてハルを見ると、すやすやと 寝息を立て既に眠りに落ちていた。
掴みかけていた希望が、糸も簡単に滑り落ちて行く。
テレビから流れる笑い声が、やけに虚しく感じる。
リビングには只、眠るハルと動けない俺……そして秋の冷んやりとした空気が、それら全てを包んでいた……。