ふたりぼっち

act.16 星空と絶望

ハルを寝室に運び終えた俺は、海の見える自室のベランダで一服する。

煙草に火を付け息を吐くと、白い煙が視界を遮った。

何も、見えない。

まるで俺達の未来の様に。


「……なーんて思うくらい、センチメンタルな気分になってんだなぁ俺」


煙は直ぐに星が瞬く夜の中に溶けていった。

今日１日、まるで奇跡でも起こったんじゃないかと錯覚するくらい楽しかった。

付き合っていた当時に、戻れた様で……。


でも、現実は残酷だ。

こんな希望をちらつかせるくらいなら、誘拐犯ではなく、アイツにとっての高瀬 明彦に１日だけ戻れるくらいなら、いっそ……

「誘拐犯のままでいた方が、マシだったよ……」


俺はこの感情が何なのかを知っている。


……絶望だ。

希望は絶望を、より濃いものにしてゆく。