ふたりぼっち

act.3 怪しい朝食

奥に進むと、キッチンとリビングがあった。男はリビングにある椅子に座り、新聞を読みながら朝食を食べている。トーストと目玉焼きとハム、それにコーヒー。男の向かいの席には、全く同じメニューがもう1人分並べられていた。私はぎこちなく、そこに座る。これはきっと、私の分の朝食だろうけど……毒でも入っていないだろうか。睡眠薬は入ってそうな雰囲気が…………「安心しろ、睡眠薬は入ってないぞ」「え、」コーヒーのマグカップから視線を上げると、男とバッチリ目が合ってしまった。「変な物は何も入れてないから、早く食べろよ」男は再び新聞に目をやる。私は目を丸くしながら、率直に疑問をぶつけた。「……どうして、私の考えてることが分かったんですか……? 」男はチラリと視線を動かし、ふっと小さく笑う。「さぁ? どうしてだろうな」その笑みは、決して嫌味とか不気味さを含んでいるものではなく。なぜかとても、爽やかに見えた。
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