ふたりぼっち
ー ……身体のあちらこちらが、痛い。熱い。苦しい。

私は、一体……どうしてしまったのだろうか。

『……おい! 君! 大丈夫か!! 』

声が、聞こえる。

生温い液体が額から流れるのを感じながら、うっすらと瞳を開く。

身体が何かに押さえつけられて、凄く熱くて痛い。

眼球だけを動かし、周囲を確認する。

私の身体は、後部座席の足下に転がっているようだ。

体中に生暖かい血が流れゆくのを感じて、とても気持ちが悪い。

先程声をかけてきた人物が、再び話しかけて来た。

『今すぐそこから助け出すよ。もう少しだけ頑張って!そして落ち着いて良く聞いてくれ。そのまま上を向いているんだ、分かったかい?! 』


(助け、だす……? 上を、向いていろ……? ……なん、で……? )

私は無意識に、微かに横を向いてしまった。

そして、見てしまったのだ。

<font color="red">すぐ側に落ちている、血まみれの腕を。</font>

腕の指先には、年季の入った結婚指輪がはめられていた。


この指輪は……見間違える筈無い。


お父さんが、お母さんに贈った指輪だ。

じゃぁ、これはお母さんの、腕……?

視線は自然と、腕の方向に動く。



そこには、ぐちゃぐちゃになったお母さんだったものが、お父さんらしきものが、血まみれで、潰れてて……





『「いやぁぁぁぁぁーーーーっ!!!!!!」』 ー

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