ふたりぼっち
診察室の奥から、彼女はゆっくりと姿を現した。

俺は木村先生に詰め寄る。

「え? 先生、これは、一体どういう……」

木村先生はどっしりとした優しい眼で全てを語ってくれた。

「実はね、アキくん。ハルくんは精神安定の薬を投与した後すぐに、落ち着きを取り戻してね。眠って何かいなかったんだよ」

先生からそう聞かされた俺は、声を出せずにいた。


じゃぁ、なんで先生はハルは眠っているなんて嘘をついたんだ……?

その疑問に答えるかのように、木村先生は俺に語りかける。
< 98 / 118 >

この作品をシェア

pagetop