えんぴつ
「それに僕はまだこれを使わせてもらうからまだ返さなくても大丈夫ですよ」

「えっ?おまえ、まさかチキって返さないつもりなのか…」

いかにも気味の悪いものを見るような目つきで軽く顔をしかめてきた。

「いや、そーじゃなくて仮に返せなくて自分の筆記具使ってたら…なんか申し訳ないだろう」

と、分が悪そうにに雅臣は答えた。
でも、今日中に返さなければ更に気まずくなるのも必須である。

「意味がわからんぞっ!あーもー付き合ってらんねぇよ!!後は自分でどーにかしやがれ」

田原はえんぴつを握ったままその場をさってしまった。自分のあまりのヘタレさに愛想でもつかされたのであろうか。

それにしたてもどうしたものか。
普通だったらそう考える必要もないが、
雅臣は女性とあまり会話しない方だったのが仇となり、どう接するべきか苦悩するハメとなったのだ。

ともあれ、このままでも悪いので打開策を見いだすことにした。

(うーむ、どうするべきか……)

僕はノートを開き彼女から借りたえんぴつで適当に文字を書き始めてみた。

文字を次から次へ書いていくうちに違う方のアイデアが閃いてきた、そう雅臣は周りは勿論田原さえ知らない趣味を持っていた。

それは小説を書くことであった。そして、書くにあたって一番こだわっているのが「えんぴつ」で書くことだ。

そんな趣味を何故隠すかというと、ただ何となく恥ずかしいというだけだということであった。

雅臣は本来の目的を忘れ文字を綴ることに没頭していった。
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