ヘビースモーカー~先生の香り~

「いいから呼べ」

「い・や・で・す」

もう自棄になってる私は、退こうという考えは絶対に浮かばなかった。

「ったく」

多少イラついたように言うヘビスモ先生に、一瞬ビクッとなってしまう。

そんな私の行動が面白かったのか、口角を上げくつくつ笑い、さっきまで吸っていた煙草を携帯用灰皿に押し付けた。

「ふっ…お前は気が強いんだか弱いんだか、分からん奴だな」

そう言いまた近づいて来る先生に後ずさるも、すぐ追い付かれてしまった。

すると、先生が右手を上げ私に近づける。

そんな先生につい反射的にビクつき目をつぶると、ポンッと頭に暖かくて大きな何かが置かれた。

瞬間、ふわっと香る煙草のにおい。

そっと目を開けると、思った以上に近くにあった先生の調った顔。

上を見ると先生の腕が見えて、頭に乗っかってるのは先生の大きくて細い手だと分かった。

「せ、先生…?」

とりあえず呼んでみるが、先生は小さく笑っただけで何も答えてはくれなかった。

一方私は、先生が笑った瞬間頬がカアッと熱くなり、先生を直視できなくなっていた。

先生はただ笑っただけなのに、自分の体が自分のじゃないように制御不能になり、思考もままならない。

今私の脳を支配しているのは先生のことだけ。

私、どうしちゃったんだろう。


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