ヘビースモーカー~先生の香り~
「ま、とにかく入れ」
散々私の顔に煙りを吹き掛けたあと、いじめに満足した子供のように笑って保健室に入る。
そのあとを躊躇しながらも少し進み、扉のとこでいったん足を止める。
「入んねーのか?」
そんな私をチラリとも見ずに、さっきまで吸っていた煙草を灰皿に押し付けている。
「まずは窓を開けて下さい」
「あ?」
「煙草のにおい、臭いんです」
「ったく、これだからガキは。このにおいの素晴らしさが分からねーとは…」
そういってヤレヤレのポーズをわざとらしくやる。
でも、そのあとはへいへい、なんて言いながらめんどくさそうに窓を開けてくれた。
教師らしからぬ言動に煙草。
だけど根は優しいんじゃないかと不覚にも思ってしまった。
「ほら、開けてやったぞ。有り難く思え」
「……」
至って普通のことを当たり前に実行しただけなのに、こうも偉そうに言えるものなのだろうか。
そんな事を思っていると、先生が窓の方を見て悲しそうに言った。