ヘビースモーカー~先生の香り~
「おーおー、煙草のいいにおいが逃げてくぜ」
そう言いながら部屋に残った微かなにおいを思いきり吸っている。
あまりにも悲しそうに言い、必死に吸っている先生を見て、つい
「……ごめんなさい」
と言ってしまった。
そんな私の謝罪の言葉に、先生はピタッと止まり切れ長の瞳を限界まで見開いた。
と、思ったら面白いものを見つけた子供のような、無邪気な笑みを顔に張り付け私を見た。
ただ、その笑みを先生がしたらとても意地悪な笑みに見えるのは私だけだろうか。
「な、何ですか?」
「クククッ」
私の質問には答えず、ただ笑っている先生に私は眉を潜めた。
すると、
キーンコーンカーンコーン――…
「あっ」
「おっ」
お互い短く言葉を発した。
「ったく、結局お前入んねーし煙草のにおいは逃げるしで災難だったぜ」
「す、すみません」
「ま、とりあえずクラス番号名前言え」
「あ、はい。1年3組26番、成瀬裕子です」
「成瀬、裕子っと。ま、見るからに元気そうだから大丈夫だろ」
「はーい」
それから私は保健室を出た。