カタヲモイ
第1章
1

あなたに恋しちゃ駄目ですか?
もしも駄目なら、何が駄目ですか?
背が低いことですか?前髪がパッツンなことですか?頭が悪いことですか?能天気なことですか?
今の私は、どう映っていますか?

ベートーヴェンの、ピアノソナタ第14番嬰ハ短調「幻想曲風に」。
1説には、ベートーヴェンが当時叶わぬ片想いをしていた貴婦人への気持ちを綴ったものと言われている。
叶わぬ恋。無駄だとわかっていても、止まぬ思い。身が引き裂かれるような苦痛。グシャッと潰れてしまいそうなほど重くのしかかる何かわからない正体不明の圧力。
「恋」という形のないものを説明するには、人はあまりに言葉を持っていない。だからこそ、音楽はある。音楽であれば、抽象的ではあるが、伝えられる。恋の喜び、苦しみ、悲しみ、その全てを。
白と黒の鍵盤という舞台を、私の両手が舞い踊る。ゆっくりと、一歩一歩、音を確かめるように。軽すぎず、重すぎず、でも確かな重さをもって、ピアノの音がホールに鳴り響く。
客席で見ているあなたは、きっと知らない。これは、あなたへの私の想いだってこと。私の、言葉にならない「恋」という感情を表現しているってこと。
嗚呼、叶うならば、この音が言葉に変わり、あなたに...。

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