心理戦の100万円アプリ
モヒカンの敗北
「待て待て待て!」
足を急がせてこちらにやってくるモヒカン。
「茶髪ぅ、何があった」
明るい気分には決してなれないと言いたそうな、先程の修羅場を暗い雰囲気でケンジは話す。
「刺した? この坊っちゃんがかよ。んで今からハートブレイクしようってのか」
「モヒカンさん、休憩されてても良かったのですが参戦されますか?」
何も知らないモヒカンがぽんぽんと面屋の頭を叩くのにヒヤリとしたが、面屋はあの笑顔で答える。
裏、表の顔がハッキリしすぎている。あのおぞましい顔が面屋の「裏」、笑顔が「表」。真ん中はない。
「こいつらカスだからな。面白そうだ、さっきのもある。俺がサシでやるよ。全員俺が潰す」
モヒカンが勝負を煽るが、「坊っちゃん」なんて言う所で見誤ってる。だが、モヒカンが倒してくれれば正直助かる。
「モヒカンさんは、僕と今から勝負するんですか?」
「ああ、問題ないだろう。表示されてないがポイントは稼ぎまくるに限る。ふぃひひ。否定してやる」
「いいですけど、モヒカンさん。さっきの完全に勝ったと思ってます?」
右眉を上げて、モヒカンはいつもの声のトーンで面屋のゆっくりのトーンに合わせない。
「あ? 完全に勝ちだろうが。文句あんのかよ」
「僕が参戦してたら、僕が勝ってました」
なんだ、何を言ってる。「嘘」をテーマに勝負するんじゃないのか? この流れはさっきの勝負をもう一度するという事か?
「あれ以上はねぇよ。なんならもう一回するか? だが判定勝ちも、勝負がつかなくても俺の勝ちならな」
「いいですよ、それで始めましょう。ハートブレイク」
「本気かよこの坊っちゃん。いいぜ、ハートブレイク」
絶対無理だ、モヒカンだからこそあそこまで持っていくことができたんだ。手の内がバレてるのに勝負になるわけがない!
『パチン』
「ふぃひひ、悪いけどもう終わらせるぜ。俺は世界で1番幸せ。そして、何が幸せなのかも一切喋らない。お前はこれより幸せを証明できないければ否定だ」
面屋は表の顔を作ると少し瞳に罠を仕掛けたような、怪しさをまとった雰囲気で答える。
「僕も世界一幸せです」
『パチンパチン』
「ほらな、勝負なんてつかねぇ」
「ただ」
ピクリとモヒカンは動きを止めて面屋の目を睨む。
「僕はモヒカンさんの幸せを願っています。モヒカンさんが幸せに思う事全てが僕にとって幸せなんです」
この言葉で1番動揺したのが彩子。お茶に手が当たりこぼすが目線をハートブレイクしている2人から離せない。
これはヤバイ。モヒカンが何が幸せなのかを言わなくても、この言葉でモヒカンの幸せ全てが当てはまる。
そしてそれが自分の幸せと言う事で自分のプラスになる。
モヒカンが幸せを主張すればするほど、面屋の幸せが同じ分だけ上がる。それが本音ではない事は明らかでも、それはここでは関係ない。
歯を強く噛む様な仕草を見せたモヒカンは、机に手を強く手のひらを叩く。
「お前が俺の幸せを願う理由がない」
「おや? モヒカンさんのこれが幸せなんて理由なんてない様に、僕の幸せ論も自由です。モヒカンさんなら解るはずです、これをひっくり返すにはもう、僕がモヒカンさんの幸せを願う事を完全に否定する事……勿論そんな事絶対不可能です」
終わった……アッサリと。モヒカンが簡単に。言い返す事ができないモヒカンなんて初めて見る。
そんなに面屋という男が強いのか?
「モヒカンさん、普通のハートブレイクなら僕は勝てない。けどこの幸せのテーマに限っての正解は、『ヒーラー』だと思ってます。あなたの負けですよ」
勝ちを笑顔で宣言する面屋の顔をモヒカンは見ることができない、逆転を探してるんだろうがもう無理だ。
『ぺっ』
置かれたモヒカンの手のひらに唾が吐きかけられた。
え? と四人が面屋の顔を見る、余りに話の流れにそぐわない行動に仰天する。
裏の顔になった面屋は太もも当たりの椅子の隙間から、アイスピックを取り出すと驚いている一瞬にモヒカンの手のひらを唾の上から力任せに鈍い音を立てて突き立てた。
「てめぇの負けだっつってんだよお。負けましたも言えねえゲロ男かよ? 最初ライターで足炙ってくれたよな、あぁ!?」
「ぐう! ううううう!」
モヒカンは眉をピクピクと動かし、大声は出さずうめき声を上げる。
「刺す事はないじゃない! やりすぎよ! 暴力行為は500万よ!?」
面屋はアイスピックを抜き、彩子に向ける。
「僕はアプリを作った人間の1人だ。ピープルなんだよ、そんな問題どうにでもできる。あんまり理解できてねーよーだから教えてやる、僕はイかれてる所はあるが頭は至ってクレバーだ。自分が何をしているかくらい解ってる」
「あんた異常だよ! ハートブレイクにアイスピック使うならもう心理戦でもなんでもない!」
ケンジが立ち上がり咆哮するが、面屋はニコリと表の顔になると、アイスピックを逆さに持ち替えると、モヒカンの太ももに振り下ろした。
「ぎ! ぐうぅ」
「僕は普通にやっても君たちに勝てない、だからアイスピックを使う。その異常という空気の中でしっかり頭を使ってくれ。そうしないと意味がないんだ。因みに僕に対しての暴力行為は500万、問題ある?」
顔を上げたモヒカンは口を大きく開け、噛み付く様に面屋に遅いかかり、首を絞める。
「殺す、本当に殺す!」
この動作にすぐ運営のスーツがきて、モヒカンを取り抑える。
「離せ! 刺されたんだ! 殺す!」
ケホケホ、と咳をすると面屋は表の顔になり優しく喋る。
「僕はやり返して来る様な人の方がタイプなんだ、興奮するよ。今のは罰金無しにしてあげるよ、運営さんはモヒカンを治療しながら抑えてて、こっちのハートブレイクが終わるまで」
飲み込まれた様に身動きも口も動かない。
面屋はこの一連の事も普通なのか?
「では邪魔が入ったけど始めよう、テーマは嘘。僕が話題で嘘をつく、それを見破ったら勝ち。当然どれが嘘か解らないだろうから、そこは会話の中で心理を読んでくれ。1人3回チャンスをあげる。正解は必ず3つ。4回目からのチャレンジは、アイスピックで刺す。そっちが勝つまでやって貰うよ」
机にダン! とアイスピックを突き立てると、裏の顔に豹変する。
「ハートブレイクだ、最初の挑戦者。手ぇ出せ」
足を急がせてこちらにやってくるモヒカン。
「茶髪ぅ、何があった」
明るい気分には決してなれないと言いたそうな、先程の修羅場を暗い雰囲気でケンジは話す。
「刺した? この坊っちゃんがかよ。んで今からハートブレイクしようってのか」
「モヒカンさん、休憩されてても良かったのですが参戦されますか?」
何も知らないモヒカンがぽんぽんと面屋の頭を叩くのにヒヤリとしたが、面屋はあの笑顔で答える。
裏、表の顔がハッキリしすぎている。あのおぞましい顔が面屋の「裏」、笑顔が「表」。真ん中はない。
「こいつらカスだからな。面白そうだ、さっきのもある。俺がサシでやるよ。全員俺が潰す」
モヒカンが勝負を煽るが、「坊っちゃん」なんて言う所で見誤ってる。だが、モヒカンが倒してくれれば正直助かる。
「モヒカンさんは、僕と今から勝負するんですか?」
「ああ、問題ないだろう。表示されてないがポイントは稼ぎまくるに限る。ふぃひひ。否定してやる」
「いいですけど、モヒカンさん。さっきの完全に勝ったと思ってます?」
右眉を上げて、モヒカンはいつもの声のトーンで面屋のゆっくりのトーンに合わせない。
「あ? 完全に勝ちだろうが。文句あんのかよ」
「僕が参戦してたら、僕が勝ってました」
なんだ、何を言ってる。「嘘」をテーマに勝負するんじゃないのか? この流れはさっきの勝負をもう一度するという事か?
「あれ以上はねぇよ。なんならもう一回するか? だが判定勝ちも、勝負がつかなくても俺の勝ちならな」
「いいですよ、それで始めましょう。ハートブレイク」
「本気かよこの坊っちゃん。いいぜ、ハートブレイク」
絶対無理だ、モヒカンだからこそあそこまで持っていくことができたんだ。手の内がバレてるのに勝負になるわけがない!
『パチン』
「ふぃひひ、悪いけどもう終わらせるぜ。俺は世界で1番幸せ。そして、何が幸せなのかも一切喋らない。お前はこれより幸せを証明できないければ否定だ」
面屋は表の顔を作ると少し瞳に罠を仕掛けたような、怪しさをまとった雰囲気で答える。
「僕も世界一幸せです」
『パチンパチン』
「ほらな、勝負なんてつかねぇ」
「ただ」
ピクリとモヒカンは動きを止めて面屋の目を睨む。
「僕はモヒカンさんの幸せを願っています。モヒカンさんが幸せに思う事全てが僕にとって幸せなんです」
この言葉で1番動揺したのが彩子。お茶に手が当たりこぼすが目線をハートブレイクしている2人から離せない。
これはヤバイ。モヒカンが何が幸せなのかを言わなくても、この言葉でモヒカンの幸せ全てが当てはまる。
そしてそれが自分の幸せと言う事で自分のプラスになる。
モヒカンが幸せを主張すればするほど、面屋の幸せが同じ分だけ上がる。それが本音ではない事は明らかでも、それはここでは関係ない。
歯を強く噛む様な仕草を見せたモヒカンは、机に手を強く手のひらを叩く。
「お前が俺の幸せを願う理由がない」
「おや? モヒカンさんのこれが幸せなんて理由なんてない様に、僕の幸せ論も自由です。モヒカンさんなら解るはずです、これをひっくり返すにはもう、僕がモヒカンさんの幸せを願う事を完全に否定する事……勿論そんな事絶対不可能です」
終わった……アッサリと。モヒカンが簡単に。言い返す事ができないモヒカンなんて初めて見る。
そんなに面屋という男が強いのか?
「モヒカンさん、普通のハートブレイクなら僕は勝てない。けどこの幸せのテーマに限っての正解は、『ヒーラー』だと思ってます。あなたの負けですよ」
勝ちを笑顔で宣言する面屋の顔をモヒカンは見ることができない、逆転を探してるんだろうがもう無理だ。
『ぺっ』
置かれたモヒカンの手のひらに唾が吐きかけられた。
え? と四人が面屋の顔を見る、余りに話の流れにそぐわない行動に仰天する。
裏の顔になった面屋は太もも当たりの椅子の隙間から、アイスピックを取り出すと驚いている一瞬にモヒカンの手のひらを唾の上から力任せに鈍い音を立てて突き立てた。
「てめぇの負けだっつってんだよお。負けましたも言えねえゲロ男かよ? 最初ライターで足炙ってくれたよな、あぁ!?」
「ぐう! ううううう!」
モヒカンは眉をピクピクと動かし、大声は出さずうめき声を上げる。
「刺す事はないじゃない! やりすぎよ! 暴力行為は500万よ!?」
面屋はアイスピックを抜き、彩子に向ける。
「僕はアプリを作った人間の1人だ。ピープルなんだよ、そんな問題どうにでもできる。あんまり理解できてねーよーだから教えてやる、僕はイかれてる所はあるが頭は至ってクレバーだ。自分が何をしているかくらい解ってる」
「あんた異常だよ! ハートブレイクにアイスピック使うならもう心理戦でもなんでもない!」
ケンジが立ち上がり咆哮するが、面屋はニコリと表の顔になると、アイスピックを逆さに持ち替えると、モヒカンの太ももに振り下ろした。
「ぎ! ぐうぅ」
「僕は普通にやっても君たちに勝てない、だからアイスピックを使う。その異常という空気の中でしっかり頭を使ってくれ。そうしないと意味がないんだ。因みに僕に対しての暴力行為は500万、問題ある?」
顔を上げたモヒカンは口を大きく開け、噛み付く様に面屋に遅いかかり、首を絞める。
「殺す、本当に殺す!」
この動作にすぐ運営のスーツがきて、モヒカンを取り抑える。
「離せ! 刺されたんだ! 殺す!」
ケホケホ、と咳をすると面屋は表の顔になり優しく喋る。
「僕はやり返して来る様な人の方がタイプなんだ、興奮するよ。今のは罰金無しにしてあげるよ、運営さんはモヒカンを治療しながら抑えてて、こっちのハートブレイクが終わるまで」
飲み込まれた様に身動きも口も動かない。
面屋はこの一連の事も普通なのか?
「では邪魔が入ったけど始めよう、テーマは嘘。僕が話題で嘘をつく、それを見破ったら勝ち。当然どれが嘘か解らないだろうから、そこは会話の中で心理を読んでくれ。1人3回チャンスをあげる。正解は必ず3つ。4回目からのチャレンジは、アイスピックで刺す。そっちが勝つまでやって貰うよ」
机にダン! とアイスピックを突き立てると、裏の顔に豹変する。
「ハートブレイクだ、最初の挑戦者。手ぇ出せ」