心理戦の100万円アプリ
「どこが嘘つきっていうんだい?」
熱くなってきた、いよいよ本物の嘘つきだな。嘘つきは論議では厳禁、バレると一気に劣勢になる。個人論では、嘘に真実を混ぜると解らなくなる。
真実8対2嘘なら見破るのは困難という具合に。コイツは見るところ嘘8の真実が2だ。
無理矢理自分のフィールドを作って油断させといて、ギャップで後で本性を出して決めるつもりだったんだろう、バレバレだ。
余裕を見せる為にタバコに火をつけて煙を吐く。
「まず、靴。ピカピカすぎるし、少しも汚れていない。 会話も変だ、ここに慣れてないのがすぐ解る。そして1番はポマードだ。毎日慣れてる人なら後ろまでキッチリするんですよ。あなたは、後ろはまるで手付かず。そんなの絶対エリートじゃない。だから嘘つき。」
これはカマかけ。だが見るからに嘘の塊ならこれだけふっかけたらすぐボロが出る。だがポマードの表情は崩れず黙ったまま。
「最後に1番高い酒を下さいと言ったね、イタリアンの店でそんな注文の仕方はしない。1番いいワインを下さいだ、行きつけならワインの名前を出すのが自然」
「確かにエリートではないが人間として君に劣っているとは思わない!」
無表情の仮面がついに取れた。
指でピストルの形を作りポマードに向ける。
『バン!』
「なんの真似だ?」
「その言葉を待ってたよ。今僕の勝利が確定したんだ」
「なんでだよ!」
顔面のパーツがエリートからどんどん崩れて行く。
「あんたねぇ、もう負けてるんですよ。だって最初から嘘つきで近づいてきたんだから、嘘がバレると、その後の言葉全て嘘とみなされるんですよ。あなたの言葉はもうこの場では意味を持たない。無理してエリートしなければもう少し話せたのにね。サヨウナラ」
ポマードはさっきまでエリートの顔をしていたのを忘れさせる程の、絶望の単語を表情に出しテーブルの上の握り拳を震わせた。
「ぐ……ぎ」
ポマードの置かれたケータイにはマイナス214ポイントとあった。ゲームオーバーだ。
僕は自分のケータイを見て、スラッシャー65ポイント獲得と表示されたのを確認すると伝票を机の上に置いた。
「ご馳走様」