彼女は心に愛を飼っているらしい
片付けが終わり、もう一度部屋に戻ってきた時、僕は再び参考書を広げて勉強机に座った。
ペンを走らせて問題を解いていて、機械みたいに知識を詰め込む生活。
それでいいと思ってた。
それが受け入れられるものであるのなら。
「……っ、」
だけど、それでいいのかと彼女が尋ねる。
僕の心の中をえぐるように、そして心の核を取り出すように、
隠したものを引っ張り出してくる。
絵の具は混ざり合って染まり新たな色を生む。
人もたぶん、同じように染まるのかもしれない。
そんなことを考えていたら、気づけばペンは止まっていた。
一度止まるとリズムを忘れたように崩れていく。もう一度問題に取り掛かろうもしても、再びペンが動くことはなかった。
ペンを置いて昨日開けた引き出しに手を伸ばす。使い古した絵の具は机の中に入っていて、まるで使ってもらえる時はじっと待つように眠っていた。
ゆっくりと箱を開け、強く香る絵の具の匂いに目を瞑る。
絵の具は汚れてはいるものの、全ての色が揃っていた。
海の青。コバルトブルーに手を伸ばす。キャップを強めに捻ると、パキッと音を立ててそれは開いた。
中は固まっていて、真ん中を押しても出て来ない。