彼女は心に愛を飼っているらしい
苛立ちは彼女が僕に話しかけた分だけ募っていく。
「そういえば、キミの名前ってはぐむって言うんだね。すごくいい名前だよね」
どうやら彼女は空気を察するということが出来ないらしい。
「ねぇ、」
だったらもう言ってやるしかない。
とうとう堪忍袋の緒が切れた僕はぴたり、と足を止めた。
僕の足が止ったことを、話してくれるものだと勘違いしたんだろう。ぱっと顔を明るくさせた彼女が視界に映る。
今から傷つけられるともしらず、ずいぶん無垢なものだ。
「どうしてキミに友達が出来なかったのか教えてあげようか」
彼女を遠ざけるための効果的。それが彼女を傷つけると知っていて、僕はわざわざその言葉を選んだ。
「なに?」
じっと彼女を見つめると、きょとんとした顔でこっちを見て来る。
本当に何もしらないんだろう。
「痛い人だって思われたんだよ、真剣に夢を語ったりするからみんなキミをバカにしたんだ」
皮肉を込めた笑いを送りながら彼女を見た。
しかし彼女から返って来た言葉は見当違いのものだった。