彼女は心に愛を飼っているらしい


彼女のキラキラとした目がこちらに向けられるのはまだ慣れない。

ぱっと目を逸らして、深いため息をつく。この動作を彼女の前で晒すのは何度目だろう。

普通は拒否したら遠ざかってくものなのに。いや、拒否しなくてもつまらない、と判断すれば人は自然と遠ざかる。

僕は今より友好関係が遮断的ではなかった時、それに気づかされた。


『お前といてもつまんない』


そんな言葉を残していった友人は、きっと今の僕と話しても同じことを言うだろう。

僕には不向きなんだ。

表情が見えようが、見えまいが誰かと仲良く話すなんて必要ない。


その時、優しい風がふわりと吹いた。

彼女の歌った歌が今でもまだ耳の奥に残っていて思い出す。


〝誰もキミをバカにしたりはしない”


まるでそう伝えられているみたいでむずむずした。


よく言うよ。
伝えたら離れていくくせに。

誰にも理解出来ないこの気持ち。誰かに打ち明けたら楽になるだろうって、そんな甘っちょろいことを考える僕じゃない。


僕はじっと彼女を見つめた。きょとんと首を傾げる彼女を見て、心の中でそっとつぶやく。


いいさ、じゃあ。
教えてあげるから離れていけばいい。



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