彼女は心に愛を飼っているらしい
「つい」
「キミ、私のことが見えてるじゃない」
「だってウソだし」
「ウソじゃないよ」
「どうしてキミがそんなこと言うんだよ」
「だってキミはそんな冗談を口にするような人じゃない」
僕の何を知ってるんだ。
思わず口に出しそうになる言葉を止める。彼女の場合、こうして誤魔化すよりも、諦めて話した方が早いと思った。
投げかけた言葉をそのまま素直に拾う彼女。
未知の世界を知ることは怖いことだ。
それに踏み込んで来る人物なんているわけもないって思っていたのに、やっぱり彼女は変わってる。
「キミだけは何でか知らないけど、見える」
ああ、そうだ。
存在しないと否定しているうちは何も広がらないーー。
これは誰の言葉だったか。
「そっか、だからあの時私に向かってぐちゃぐちゃじゃないって言ってたんだね」
彼女はやけにしみじみとした顔をして頭を縦に振って見せた。
「私だけ見えるのはなんでだろう」
「キミがヘンテコな人だからじゃない?」
「えー!私ヘンテコかなぁ?まぁそれでもいいよ。なんだかすごく楽しい気分だから」
僕は変なの、と小さくつぶやいた。
そして彼女が胸をぴしっと張り誇らしげな顔をするのをじっと見ていた。
「秘密を教えてくれたキミに私の秘密も教えよう」