彼女は心に愛を飼っているらしい
2.決められた将来の夢
今日も彼女はここにいるのがさも当たり前かのように僕の目の前に座ってお弁当を食べている。
「私たち、周りから見たら友達に見えるのかな?」
「見えないだろうね」
「じゃあ恋人!?きゃっ、」
「きゃっ、じゃないよ。強いて言うなら僕に付き纏う変人だ」
「むっ、それはキミサイドの見え方じゃない」
「よくご存知で。キミ早く友達作ったら?」
僕の言葉に彼女は肩をすくめて悲しそうな顔をした。
欲しいけど、出来ないんだってことがすぐ分かる。彼女が分かりやすいのか、それとも久しぶりに表情が見えることで冴えているのか、どちらかは分からない。
けれど、くるくる変わる彼女の表情を見ていたらほぼ前者な気がした。
「はぁ、」
暖房のよく利いたこの部屋が僕の眠りを誘う。思わずあくびが漏れて、僕は口元を手で覆った。
『私はね、心に愛を飼ってるの』
昨日、彼女のすっとんきょうな言葉を無視したのはいいとして、足を止めていたせいで家に着いたのはいつもの40分も遅かった。
僕の両親はふたり揃って帰宅が遅いため、家に帰るのが遅くなっても、鬼のような顔して玄関で待っていることは無いし、その日カンカンに叱られることはない。