彼女は心に愛を飼っているらしい
けれど、1週間に1度どれだけ勉強したかを見られてるので、勉強出来なかった分は寝る時間を返上してやらなくてはいけなかった。
その結果昨日は寝るのが少し遅くなり、日差しが差してくるとうとうとしてしまう。
そんな眠気の原因を作った犯人は僕の気持ちも知らず、今日も一口サイズに切られた卵焼きを美味しそうに頬張っていた。
「うん~美味しい~」
声を出しながら、毎日幸せそうな顔して食事する彼女。僕にはその気持ちが到底理解出来ない。
朝起きて、食べれもしない紙切れがポツンと机に置かれているのだ。理解なんて出来るわけないか。
僕は自らを嘲笑うかのように、ふんと鼻を鳴らした。
ハンバーグを箸で一口に切り、口に運ぶ。今日は卵焼きが入っていないものをわざわざ選んだ。
無心でもぐもぐと口を動かしていると、彼女がふと“愛”について話し始めた。
「昨日私がさ、心に愛を飼ってるって言ったでしょう?」
「…………」
どうやら話したいのは、彼女が心に飼っている“愛”についてらしい。
「その愛は表現できないものなんだけどね。大切な人の思い出とか温かさとか優しさとか、そういうのが全部詰まってるものなんだよ」