彼女は心に愛を飼っているらしい
僕はずらりと並ぶ係りの中で一番楽そうな「得点係り」を選ぶことにした。
先生が最初から順に、係り名を読み上げて、やりたいものに挙手をする式だったので僕は速やかに手を挙げる。
「男子は森谷で決定な」
「得点係り」は僕の他に手を挙げる人はいなかった。決まったことにひとまずほっとする。
「あと一人、女子でやりたいものはいないか?」
しかしこの言葉の後に手を挙げた人物に僕は眉をしかめた。
「私、やりたいです」
「よし、雨宮な。これで得点係りは決まりだ」
僕は彼女を睨むように見る。すると、その視線が伝わったのか、彼女は振り返って、僕にピースを向けて来た。
迷惑だって意味で視線を向けたのに。
人の気持ちをまるで考えない彼女の性格は遺憾なく発揮されており、見事だと手を叩きたいくらいだった。
そして係り決めが終わると、彼女はこちらにやって来て笑顔で言う。
「これからよろしくね」
これから……。
僕はその言葉を聞いた時、これからのことを想像してどっ、と疲れてしまったのだった。
放課後ーー。
HRが終わると、カバンを持ち教室を出た。
僕の後ろをちょろちょろとついてくる彼女にうんざりしながら、ため息をつくと僕はぴたりと足を止める。そしてゆっくり振り返って彼女に言った。