彼女は心に愛を飼っているらしい
僕がこの場所で両親と話す時は必ず将来の話か、勉強の話だった。
学校に行っていても「好きな子出来たの?」とか「今日の学校はどんなことしたの?」とか無駄なことを聞いて来たりはしない。
それは、学校は勉強するための場所、という意識が二人にあるからだ。
無駄を一切取り除いた僕たち家族は、他から見たらどう映るのだろう。
「今日はさ、久しぶりに外出しようか?お父さんも夜から合流出来そうだから」
「…………」
「はぐむ?」
「あ、うん」
外食。
僕はその言葉に少しの違和感を覚えた。外で食べることを外出と言うのならそれは正しい。
ただ、外で買ってきたものを毎日食べている僕にとって外出が久しぶり、なんてとても思えなかった。
「何?気分じゃない?」
「いや、」
なんでもいいや。僕は心の中でつぶやいた。
もう一度マグカップに持ち、コーヒを口元に運ぶ。味は変わらないはずなのに、美味しく感じないのはなぜだろう。
「ごちそうさま」
僕はわずかに残ったコーヒーを流し台の上に置いて、自分の部屋に向かった。