彼女は心に愛を飼っているらしい
ポンポンと頭を撫でられて自分はひどく無力なんだと思い知らされた。
この紙切れがひどく憎いにも関わらず、それを拒否する手立てがない。拒否したら僕は生きていけなくなるからだ。
「ほら、出前とかどう?うな重とかお寿司とか、好きなもの食べたらいいのに」
どんなに美味しいものを食べたって、どんなに高級なものを食べたって、そこには何かが欠けている。
僕の求めているものがないのであれば、安いコンビニのオニギリを食べようが高級なうな重を食べようが変わらなかった。
虚しさと、寂しさ。
彼女が愛を飼っているのなら、僕の中にはその二つが常に存在するのかもしれない。
次の日。
昼休みの時間になると彼女はいつものごとく、僕の目の前でお弁当を広げて、僕が返事をしなくても一人でしゃべり続けた。
それはお弁当を食べ終わっても、チャイムが鳴るまで続けられ、担任が入って来たところでようやく彼女は自分の机に戻るのだった。
呆れることすら疲れてしまうくらいのずうずうしさだった。
彼女が去っていき、ほっとしていると教師が教卓の上にどさり、と音を立ててプリントを置く。
すると、担任は言った。
「今日は進路希望調査をします。この紙に将来自分がなりたいものを書いてください」
5限目は授業ではなくHRの時間だった。