彼女は心に愛を飼っているらしい
高校2年生。
きっと子ども扱いされると、もう子どもじゃないのにと文句を垂れて、責任を押し付けられるとまだ子どもなのに、と逃げることが出来る年。じゃあ進路を決める時にはどう言うのだろう?
「えーまじかよ」
「さっそく?決まってないんですけど~」
高2になってすぐ、やりたいことを決めなくてはいけないことに周りは文句を垂れる。
けれど、なんのために学校に行っているんだろうと僕は思った。
将来のために勉強をする。それなら将来なるべきものを早くから決めておくのが当然だ。
前から配られた紙を受け取ると、そこには欄が3つあり、第三希望まで書けるようになっていた。僕はペンを持ってスラスラと書いていった。
第一希望:「医者」
やるべきことはこれだけであったのに、先生はシンキングタイムに5限の授業まるまる使って僕たちに紙を提出させた。
「大切なことだから、しっかり考えるように」
だ、そうだ。しっかり考えてみたら変わるようじゃこの先もやりたいことは定着しないだろう。
僕は書き終わると紙を後ろにしてすぐに持参した問題集を解き始めた。
授業ではないと周りの雰囲気は緩むもので、近くにいる人と話しだしたりして教室はザワザワしていた。
先生もそれを特に注意したりもせず、チャイムが鳴るまでみんなの書いたことを見て周りながら声をかけていた。