彼女は心に愛を飼っているらしい
夕焼けのオレンジは短い時間で人の脳裏に焼き付ける。
陽が沈んだ後も、目をつぶればそこにあるかのような幻を見せるのだ。
そこで何も考えず、ただぼーっとたたずんでいたら、ゆっくりと僕の隣に並ぶ人物がいた。
「すごくキレイだね」
もうすっかり見慣れてしまった赤茶色の髪。それを持つ彼女はまじまじと夕日を見つめている。
「後をつけてたの?」
「まさか!今日は偶然だよ。キミが公園に入っていくのを見つけたから」
「見つけたからここに来たんなら後をつけたことになる」
「へへっ」
へらっと笑う彼女はいつもより少しばかり大人しい。
それはこの優美な景色と静けさがそうさせているのだろうか。
僕は芝生の上に腰を下ろした。彼女は僕の意図を組み取ったのか、同じように隣に座るとそれを確かめるように聞いて来た。
「今日は勉強時間、削られない?」
「寄り道すればした分だけ削られるよ」
「いいの?」
「たまには気分転換したい時もある」
彼女と話しているうちに、いつの間にか心に潜んでいたモヤモヤが消えていたことに気がついた。
「毎日勉強してるんだね」