彼女は心に愛を飼っているらしい
彼女の顔が、今と同じように塗りつぶされていないのなら、ほんのすこしすれ違っただけでも分かるはずだった。
そりゃあ一度も会わなかったわけだ。
「その時もね、同じように夢を語ったら少しバカにされたの。子どもじゃないんだからって。
現実的な夢を言う方が先生もみんなも受け入れてくれるみたい。例えば教師になりたいとか、後は商社に勤めたいとか」
現実味があり、なおかつ安定しているものを目標にすれば、他者はそれを笑わない。
ふわふわと現実からかけ離れたような、想像しづらいものをバカにするのだ。
「でもね、自分のやりたい事だから。子どもっぽいとか現実味ないとか言われても曲げたくないの。私は胸を張って自分のやりたいものはやりたいって言いたい」
将来を語る彼女の口調はいつもとは違い、真剣なものだった。
その強く抱える思いが目の前の赤く燃える夕日とリンクする。
彼女は自分で道を作っていく人物だ。
引かれた道は歩かない。
その道は不安定で、頼れる人は誰もいない。
それなのに、自分の夢を追うためにその道を作っては歩き出す。たった一人で。
「キミは汚れを知らないからそんなこと言えるんだよ」
ただ真っすぐに自分の道を行けば、途中で気づく。