彼女は心に愛を飼っているらしい
3.どうせ、は捨てる
ピピピ―……。
目覚ましが規則正しく音を鳴らす中、僕の意識はゆっくりと浮上する。カーテンからわずかに差し込む光は、僕が机に置いた腕時計と反射して強い光を放っている。
そのまぶしさに瞳を開けるのを拒みつつ、無理やり身体をベッドから起こせば徐々にまぶたが持ち上がっていくのが分かる。
部屋を出て、まず向かうのはキッチンだ。
流しのコックをひねってグラスに水を注ぎ、一気にそれを飲み込めばからからに乾いた喉が潤っていく。
朝食は冷蔵庫にポツンと置かれているヨーグルトと昨日母親が帰り道に買ったコンビニのオニギリ。
ダイニングテーブルに座って食べるも、いつも目の前に映るのは家族の笑顔でもなく、真剣な声色で放送されるニュースもなく、家に置かれている観葉植物だけだった。
静けさに包まれた優雅な朝。
これをある人は満ち足りた生活と表現し、ある人は寂しいと表現するらしい。
「おっはよ~」
朝、学校に向かうと下駄箱で陽気な彼女に肩を叩かれた。
僕は余裕を持って学校に向かう方でいつもチャイムのなる20分前には学校に来ている。
「今日早いでしょ?早く目が覚めたから気分がよくって速足で来ちゃった」