彼女は心に愛を飼っているらしい
そんな彼女は僕とは反対にいつもチャイムが鳴るギリギリに滑りこんで来るタイプで「セーフ」なんて陽気に言いながらも席についていた。
そんな誰にかけた言葉かも分からない言葉は誰にも拾われないのだが。
「今日は何かいいことありそう」
楽しげな表情を見せる彼女を無視して歩きだそうとした時、僕らは声をかけられた。
「雨宮と森谷、少しいいか?」
担任だ。
申し訳なさそうな声色で手招きする。
めんどくさいことを頼まれることはなんとなく分かった。
「実は職員室にあるプリントを教室まで運んで欲しいんだ。先生の机に束になっているから、それを二人で手分けして運んでくれ」
「はい」
きっと僕達が一緒にいたことで、仲がいいと勘違いされたんだろう。
彼女の返事に僕も後から続いて返事をすると、「じゃあよろしく頼むな」と言って担任は去って行った。
なにがいいことありそう、だ。
しょっぱなからこんなこと頼まれるなんて今日はついてない。
彼女に視線を移す。じとっとした視線を送ると、それに気づいた彼女は笑顔を向けてきた。
「今日は朝からキミと作業が出来るから特別な日かもしれない」
「めんどくさい」