彼女は心に愛を飼っているらしい
「小林さんはね、目がきりっと二重でスタイルもいいでしょ?モデルみたいな人なんだよ。眉毛はしゅっとしててね、声は……って声は分かるよね?ハスキーでクール!」
彼女のテンション高めの声を遮るように僕は言う。
「興味ない」
すると、彼女は困ったような顔をした。
塗りつぶされていれば、皆同じ。他人と関わらなければ、誰が、誰、なんて必要のない情報だ。
僕は彼女をおいて先に席に戻ると疲れた身体を預けるようにそのままイスにもたれにかかった。
人生は必要か、必要じゃないか、のどちらかだ。
いらないものを取り入れたって、けっきょくどこかでそれが捨てられてしまうのなら、時間の無駄である。
無駄だった、やらなきゃ良かったは、損する言葉。知らない、なら平行線のままで済む。
だったら知らない、興味ないで十分だ。
僕はカバンから筆記用具を取り出すと、1限目の授業の準備をした。
その日は案の定、自分の進路にのっとって、学校訪問をする場所を第三希望まで書き出した。
決まっていないと言っていた彼女は何て書いたのだろう、と考えていたけれど、その疑問の答えは、次の日の放課後に返ってきた。
「ねぇ、聞いてよ!」
放課後、帰ろうとカバンを持ったところで、頬を膨らませた彼女がカンカンに怒りながらこちらにやって来た。