彼女は心に愛を飼っているらしい
そして何も言わずに僕を見る。
明らかに何があったのか、と聞いて欲しそうな顔をしていた。
しかし、一向に尋ねて来ない僕にしびれを切らしたのか、彼女は自分の方から口を開いた。
「昼休みにね、進路のことで担任の先生から呼び出しがあったの」
そういえば、今日の昼休み。
お昼を食べると颯爽と姿を消した彼女は戻って来た時から、今と同じような顔をしていたような気がする。
「それでね、私の書いた進路希望調査を見てね、なんて言ったと思う?」
ご丁寧に間を空けてこちらの反応を伺うものだから、さすがに返事をしないのは可哀相になって「さあ」とだけ答えた。
「現実的な夢にしなさいだって。後ね、学校訪問の紙に書いた場所も怒られたの。アメリカなんて本気で書いたんじゃないだろって!」
アメリカ……?
僕はその言葉を聞いて心底呆れた。当然すぎる結果にかけてやる言葉さえ出て来ない。
「冗談で書いたと思ってるのかしら」
「そりゃ、そうだろ。だいたいそう言われるって想像出来なかったの?」
「だって先生が言ってたじゃない。しっかり自分と向き合って、やりたいことを自由に書いてみろって」
「それは常識の範囲内で、だろ?」